東京都の急性アルコール中毒救急搬送(2020)から見えてくるもの

東京消防庁が、2020年の急性アルコール中毒による救急搬送人数のデータを発表しました。
前年の2019年と対比させながら、コロナ禍1年目の状況を見ていきます。

1.コロナ禍の急性アルコール中毒〈規制がゆるむと搬送が増える〉

急性アルコール中毒による救急搬送人数 グラフ

急性アルコール中毒による救急搬送人数 表

感染拡大が、まだ他人事だった2020年1月。救急搬送数は、前年同月より150人多いペースでした。その後、2月下旬に大規模イベントの自粛要請が出て、3月2日には小中高校が臨時休校。4月7日に外出自粛要請を伴う「緊急事態宣言」が発令され、解除されたのは首都圏では5月25日でした(➀の矢印)。その効果か、4月・5月の救急搬送は大幅に減っています。

しかし、緊急事態宣言が解除された6月には1000人近い搬送数に戻っています。
その後、東京都は、酒類の提供を行なう飲食店・カラオケ店に対して営業時間短縮を要請しました。1回目は8月3日~9月15日(➁の矢印)、2回目は11月28日~1月7日(➂の矢印)です。その効果か、夏と暮れの救急搬送の山はありませんでした。

このデータから言えることは、感染防止のための行動規制と急性アルコール中毒発生の抑制は連動しており、規制がゆるむと救急搬送が増えるということです。

2.コロナ禍で女性比率が上昇〈20歳代では男女が半々に!〉

2020年の救急搬送を年代別にみると、20歳代がダントツに多く、20歳代と20歳未満を足すと50%と半数になります。

急性アルコール中毒による救急搬送 年代・性別 グラフ

急性アルコール中毒による救急搬送 年代・性別 表


驚くのは、女性の比率が伸びたことです。
2020年の女性比率は40%と、2019年の38%を上回っています。
年代別に見ると、2020年は、20歳未満から30歳代まで4割を超えており、20歳代では5割に迫っています。長い年数をかけてじわじわと女性比率が伸びてきていたのですが、コロナ禍に入ってぐんと進んだ感があります。

急性アルコール中毒による救急搬送 女性比率 表


なぜこんなことに?
コロナ禍の影響で、2020年の男性の搬送人数は前年の2019年に比べて40%減ったのに、女性の減少率は35%に留まったからです。年代別に確かめると、男女の減少率に有意差があったのは、20歳代と30歳代でした。その理由はわかりません。

急性アルコール中毒による救急搬送 女性減少率 表


今後心配なのは、コロナ禍の収束とともに規制がゆるんで飲み会の機会が増え、急性アルコール中毒の救急搬送が急増すること。女性の増加も非常に気になります。

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コロナ禍での大学生の飲酒状況アンケート調査(2021)のまとめ

イッキ飲み防止連絡協議会では、2021年11月12日~12月9日にインターネットで、コロナ禍の大学生の飲酒状況アンケート調査を行ないました。調査目的が、イッキ飲み・アルハラ防止キャンペーンの企画の参考にすることであっため、設問の設計には課題が多いのですが、558名の回答が集まり、コロナ禍での貴重なデータであるため公表します。なお、回答者の専攻は、社会福祉・心理・法学など、偏りがあります。

●オンラインかリアルか?

オンライン飲み会に参加経験があるか?

オンライン飲み会に参加したことがあるか? 円グラフ

2021年にリアル飲み会があったか?

2021年にリアル飲み会に参加したことがあったか? 円グラフ

オンライン飲み会の経験者は118人(21%)。普及率は高くはないようです。
一方、2021年にリアル飲み会があったとの回答は216人(33%)で、それなりにリアル飲み会が行なわれていたことがわかります。リアル飲み会の開催場所は飲食店が87%と多く、次に家・友達の家での開催が51%、公園など屋外が21%となっています(複数回答)。
ちなみに2021年は、首都圏では1月初めから9月末まで緊急事態宣言とまん延防止等重点措置が続き、飲食店の時短・人数制限が恒常的に行なわれていました。

➀頻度

オンライン飲み会の頻度は、月1~3回、年1~3回、コロナ禍以降に1~3回と、分散しています。一方、2021年のリアル飲み会の開催頻度は月1~3回がダントツで多く、頻度はオンライン飲み会よりも高くなっています。

➁時間

オンライン飲み会の平均時間は3~4時間が4割超。開始は19~21時台がメインです。しかし最長時間は幅広く、オンラインゆえの自由度がうかがえます。4時間以上が約6割で、13時間以上まであります。
一方、リアル飲み会は3~4時間が6割以上でした。ただし、オンラインは自由記載、リアルは選択式回答です。

➂主に飲むもの

オンライン・リアルともチューハイが最も多く、次いでビール系。違いは、リアルではハイボールが多い程度で、大差はありません。

●2021年のサークル等での飲み会

回答者のうち257人がサークル等に所属していました。
新歓飲み会があったとの回答は21人と少なく、しかも半数は欠席しています。新歓の開催方法は、オンライン:リアルが6:15でした。
新歓以外の飲み会があったとの回答は94人で、オンライン:リアルが5:88。リアルが圧倒的に多くなっています。参加人数は、2~9人が6割ですが、10~19人が2割超、20~50人も2割弱いました。

●未成年飲酒(コロナ禍に限定された設問ではない)

これまでに未成年者のいる飲み会の参加経験者は35%。
その中で未成年者の飲酒を確認した人は42%。全体に対する割合は14%となっています。

●飲み会での嫌なこと(コロナ禍に限定された設問ではない)

オンライン・リアルにかかわらず、これまでに飲み会で嫌なことがあったと62人が回答。その内容は、飲酒の強要24人、セクハラ的な言動・行動21人、罰ゲームなどでのイッキ19人です(複数回答)。

飲み会での嫌なこと

その他として、「強要ではないが、飲まなければいけない空気感」「酒の強要をされていて、見ていてかわいそうに感じた」「自分のペースで飲んでも泥酔してしまった」「酒量わからず泥酔する人」「酔い潰れた人の介抱」「帰宅が遅くなったこと」「隣の席の人が乱入してきた」「会話がキツい」「つまらない話を聞かされる」「お酒が嫌い」「そもそも飲み会が嫌い」「喫煙」などがあげられていました。

調査:イッキ飲み防止連絡協議会
調査期間:2021年11月12日~12月9日
実施方法:Googleフォーム(SNSでの拡散、大学関係者による拡散協力)
回答者数:558名
表・グラフなど詳細はこちらをご覧ください。

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コロナ禍の大学生の飲酒運転死傷事故(2020-2021)
飲んだ仲間を同乗させて

大学生等による、一緒に飲んだ仲間を同乗させた死傷事故が相次いで起きています。それは、飲食店やカラオケでの酒類提供に時間規制や人数規制が要請されるようになった2020年以降も、続いています。
事故前の飲酒状況をみると、コールやイッキ飲みが行なわれていたケースもあります。コンパのノリのままで仲間を乗せて運転し、重大な事故を起こしているのです。

警察庁は、飲酒死亡事故は10代~20代で多いと、警鐘を鳴らしています。

原付以上運転者(第1当事者)の年齢層別免許保有者10万人当たり飲酒死亡事故件数(平成28〜令和2年平均)

https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/insyu/info.html

1.サークル仲間と合宿などで飲んだケース

●男子大学生(21)旅先で飲酒、同乗者1人死亡、4人重軽傷/青森

2020年6月21日午前5時15分頃、十和田市からおいらせ町方向に走行中に街路灯に衝突。同乗していた1人が死亡、本人を含む4人が重軽傷を負った。
5人は神奈川県の大学の3、4年生で、サークル仲間。十和田市内で飲酒し、定員4人の軽乗用車に5人で乗り込んでいた。運転していたのは4年生で、運転免許取得から1年未満の初心運転者期間。基準値を超えるアルコールが検出されている。

●女子大学生(20)合宿先でイッキ、同乗者6人重軽傷/東京

2020年9月18日午前11時55分頃、合宿で訪れていた三宅島で電柱に衝突。同乗していた7人のうち6人に骨折などの重軽傷を負わせた。
8人は、他大学の学生と共に活動するインカレサークルに所属。事故当日は合宿最終日で、参加していた学生ら計38人は、早朝から民宿で全員飲酒。運転していた学生はワインをイッキ飲みしていた。その後、5台の車に分乗して港へ向かう途中の事故で、「運転しながら眠ってしまった」と話している。

2.酒を購入しカラオケに持ち込んで飲んだケース

●少年(19)7人がカラオケでイッキ、2人はね1人死亡/石川

2020年12月26日の午前6時半過ぎ、金沢市で2人を相次いではね、1人を死亡させて車を乗り捨てて逃走。危険運転致死傷罪などで逮捕された。
事故前に、缶ビールや焼酎などを購入し、男女7人でカラオケ店で飲んでいた。車に同乗していた女性の証言によると、曲に合わせて指名された人が酒をイッキ飲みする「コール」が行なわれていたという。弁護側は、発泡酒を1缶飲んだだけと主張しているが、女性は、コップに約30ml入れた焼酎を15回は渡し、すべて飲み干していたと証言した。

●男子大学生(20)6人が飲カラオケで飲酒、同乗者2人死亡3人重軽傷/埼玉

2021年12月23日午前6時半過ぎ、草加市でワゴン車を運転し交差点に進入、縁石に乗り上げ、道路標識に衝突。呼気から0.55mgのアルコールが検出。同乗の女子大学生(19)と女子専門学校生(20)が搬送先の病院で死亡。男子大学生(20)が重傷、18~19歳の専門学生の男女が軽傷を負った。
6人は都内のアルバイト仲間。「コンビニで酒を買い、カラオケ店に持ち込んで6人で飲んだ」「仲間を送っていく途中だった」と供述している。

3.飲酒状況の詳細はわからないが、仲間が同乗していたケース

●大学生(19)蛇行運転・複数が同乗/北海道

2020年9月27日午前2時半頃、旭川市で蛇行運転をして職務質問を受け、基準値を超えるアルコールが検知された。
乗用車には、一緒に飲酒していた複数の友人が同乗していた。

●専門学校生(20)追突・3人が同乗/北海道

2021年3月16日午前5時55分頃、札幌市の交差点で右折待ちの乗用車に追突。基準の約2倍のアルコールが検出された。
直前まで繁華街のススキノで友人らと酒を飲み、帰宅途中で、3人の同乗者がいた。

●男子大学生(20)大学の構内で歩行者はね重傷・複数が同乗/沖縄

2021年5月19日午後7時40分頃、大学敷地内で車を運転し、歩行中の大学院生をはねて顔面骨折の重傷を負わせた。基準値4倍超のアルコールが検出。
車内には友人複数が同乗。「前日深夜に飲酒し酒は抜けていると思った」と供述している。

●大学生(19)逆走し信号に衝突・1人同乗/北海道

2021年8月2日午前1時50分頃、札幌市の路上を逆走し、信号の柱に衝突。基準値の約4倍のアルコールが検出。
友人が同乗しており、「市内の飲食店で酒を飲んでいた」と供述。

●男子専門学校生(21)無免許・同乗者重傷/岐阜

2021年9月4日の午前0時半過ぎ、岐阜市で軽乗用車を無免許で運転し分離帯に衝突した。呼気0.15mg/lのアルコールが検出。
助手席の女子高校生(19)に腰を骨折する大けがをさせ、自身も左腕を骨折し救急搬送された。

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大学で実践していただきたい防止対策

アルハラの「伝統」は上級生から下級生へ引き継がれています。2012年5月にはじめて文部科学省から各大学に「飲酒事故防止を求める通知」が出され、その後も繰り返し通知が出されています。
キャンパスを安全な場にし、これ以上の死者を出さないため、大学には管理と教育の両面での徹底した防止対策を、強く要望します。

  • さまざまな機会をとらえて、アルコール予防教育や啓発キャンペーンを実施する
  • ハラスメント対策の中にアルハラをきちんと位置づけ、予防・相談体制を整える
  • 20歳未満に飲酒をすすめることを禁止する
  • イッキ飲み、飲み比べ等の危険な飲酒を禁止する
  • 授業など様々な機会に、改めてアルコールについての教育を行なう
  • サークル等の幹部・顧問に対して予防研修を実施する(酔った人への介抱の仕方も含めて)
  • 「酔いつぶし」など危険な飲み会を行なうサークル等を指導する(補助金カットも含めて)
  • このような事態が起きた場合、聞き取った飲み会の状況をきちんと公表し、問題点を指摘したうえで、断固たる態度で臨むことを学生に伝える
    ※情報を隠さず発信・共有することは、再発防止に不可欠です

参考➀ 大学等における学生支援の取組状況に関する調査(令和元年度)/JASSO
取組内容:飲酒問題に関すること
https://www.jasso.go.jp/statistics/gakusei_torikumi/2019.html

参考➁ 大学の「学生の飲酒事故対策に関する取り組み」の分析2014/イッキ飲み防止連絡協議会
https://www.ask.or.jp/article/538

参考③ 第2期アルコール健康障害対策推進基本計画(令和3年3月)
1.教育の振興等 ②大学等における取組の推進
大学等の教職員が集まる会議等を活用し、飲酒に伴うリスクの啓発やアルコールハラスメント、20歳未満の者の飲酒防止等についての必要な周知を行うことにより、各大学等における入学時オリエンテーションでの学生への周知啓発等の取組を促す。【文部科学省】
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000176279.html

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