20代の女性の急性アルコール中毒搬送人員が男性を上回る

(東京消防庁のデータより)

東京消防庁の2022年のデータによると、20代未満を除くすべての年代で「急性アルコール中毒搬送人員」の女性の割合が増加。20代ではついに女性が50.1%になり、初めて男性を上回りました。全体で見ても、女性の割合は42.5%になっています。
この状況から、今年のポスターは、女性をイメージしたビジュアルにしました。

なお、2020年に始まったコロナ禍により、外飲みの機会が大きく減少し、急性アルコール中毒搬送人員は大きく減りましたが、それ以前と同じく20代以下がその半数を占めていました。
2023年5月には新型コロナが5類になり、外飲みの機会が急激に増えています。急性アルコール中毒搬送人員のさらなる増加が予想されます。

急性アルコール中毒搬送人数の女性の割合の推移 線グラフ

急性アルコール中毒搬送人員の推移 棒グラフ

急性アルコール中毒搬送人員の推移/20代以下の割合 棒グラフ

急性アルコール中毒搬送人員の推移 年代別女性の割合 表

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場の空気も「アルハラに該当」大阪高裁が所見

(ご遺族のコメントも含めた詳細)

【近畿大学2年生の死亡事件の概要】

2017年12月、近畿大学のテニスサークルの役員交代で飲み会が行なわれました。3年生8人と2年生3人が参加し、2年生の登森勇斗さん(当時20歳)がコールをかけられてショットグラス20杯分のウォッカをイッキ飲みし、間もなく酔いつぶれて呼びかけに応じなくなりました。
飲み会の終了時刻に合わせて、「はけさし」と呼ばれるしらふの介護役(2年生8人)が会場に到着。登森さんの様子を見て、スマホで急性アルコール中毒について検索し、3年生に相談したものの、結局は救急車を呼ばないという判断になりました。意識のない登森さんを他の部員のアパートに運び込み、酔いつぶれた部員だけで付き添う人もいないまま、放置。
登森さんは急性アルコール中毒の影響で吐いた物を喉に詰まらせ、窒息死しました。

大阪府警の捜査で2019年に学生9人が過失致死罪で略式起訴され、全員に罰金の略式命令が出されました。
2020年に登森さんのご両親が学生と大学を民事提訴し、このうち近畿大学とは再発防止の徹底を条件に和解が成立。2023年、大阪地裁が元学生らに救護義務違反による賠償を命じましたが、16人のうち12人が控訴。そして2024年1月15日、控訴していなかった4人を含めて、ご両親に5090万円を支払う条件で和解が成立しました。
大阪高裁による和解調書では、次のような所見が示されています。

●飲ませた責任について
一審では「違法な飲酒の強要はなかった」として、飲ませた責任は認められませんでしたが、二審では次の所見が示されました。
「たとえ物理的な飲酒の強要がなかったとしても、コールと場の空気による心理的な強要が働くのであって、アルコールハラスメントに該当する」

●放置した責任について
二審では「その結果は、死亡という重大なものであり、その態様は、人により関与の程度に濃淡はあるが、保護責任者遺棄致死罪にも値する行為である」とされました。

イッキ飲み防止連絡協議会が、飲酒強要の危険を広く知らせるため、アルコールハラスメントという言葉をキャンペーンで使い始めたのは2000年のことでした。
それからここに至るまでには、子どもの死について真実を知りたいと願って訴訟を起こした、多くのご遺族の戦いがありました。
そして今回、「場の空気」も心理的な強要でありアルコールハラスメントだとの所見が示されたのです。これは訴訟の積み重ねによる、大きな前進です。
けれどそれは、若者たちのかけがえのない命が失われた積み重ねでもあることを、決して忘れてはいけません。

登森勇斗さんのご両親は、次のようなコメントを発表されています。
「たった一本電話をかけて、救急車を呼んでさえいてくれたら、勇斗の命は確実に救われていました。この事件はまだ終わっていません。勇斗以外にもアルコールハラスメントや救急車を呼ばれなかったことで命を落とした学生は数多くいます。本件のような事故を二度と起こさないための、全ての取組みのスタートであって欲しいと願っています」

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学生たちが飲酒後に暴走<飲酒運転の実際>

(2023年のネットニュースから収集)

高校生・専門学校生・短大生・大学生、17~23歳の事例です。運転免許を取得して間もない年代で、20歳の飲酒許容年齢前の学生も多くいます。ネットニュースからの事例収集であり、実際にはもっと多いと思われます。特徴的なのは、深夜から朝に集中していること。電動キックボードによる事故も含まれています。「飲酒の基本的な知識」を、教育機関や自動車教習所でしっかり伝える必要があります。

立場 年齢 性別 都道府県 発生月日 発生時間 状況 報道
高校生 17 女性 熊本 2023/12/9 未明 熊本市で酒気を帯びた状態でバイクを運転。「自宅で酒を飲んで熊本市中心部に行き、その帰り」と供述。無免許運転の疑いも。 12/10
テレビ熊本
高校生 17 女性 沖縄 2023/6/27 午後3時半頃 沖縄市で、軽乗用車を運転して信号待ちの車に追突、基準値の約4倍のアルコールを検知した。「今朝まで酒を飲んだが、今は体に残っていないと思った」と容疑を否認。 6/30
沖縄タイムス
高校生 17 男性 福岡 2023/3/12 午前3時過ぎ 久留米市で、並走するバイク2台を警察が見つけて声をかけたところ、2台は逃走。うち原付バイク1台が転倒。運転していた少年は、すりむく程度のケガをし、もう1台のバイクはそのまま逃走した。原付バイクの少年の呼気から基準値の1.6倍のアルコールが検出。 3/13
福岡放送
大学生 18 男性 熊本 2023/11/25 午前7時過ぎ 熊本市で乗用車を運転し、交差点で信号待ちしていた乗用車に追突した。基準値を超えるアルコールが検出され、容疑を認めている。 11/25
熊本朝日放送
専門学校生 18 男性 愛知 2023/11/20 午前9時半頃 名古屋市で、乗用車を酒気帯び運転し、停車中の救急車に追突。搬送中の急病人が胸を打撲したが命に別状なく救急隊員3人も軽傷。 11/20
CBCテレビ
大学生 19 男性 兵庫 2023/11/19 午後11時過ぎ 神戸市で乗用車を運転、路肩に停車中のトラックに追突し大破、助手席の友人男性(19)に太ももの骨を折る重傷を負わせた。基準値を超えるアルコールが検出。「車に乗る前に酒を飲んでいて、体にアルコールが残っているのはわかっていた。しかし遊びに行くために飲酒運転をしてしまった」と認めている。 11/20
MBS
短大生 19 女性 京都 2023/10/21 午前8時40分頃 京都市で軽乗用車が右折する際、道路上の小2女児に衝突、腰打撲の軽傷を負わせて逃走。女児が泣いている様子を近所の住民が不審に思い、車の写真を撮影していたことから車の特定につながり逮捕に至った。「逃げた理由は飲酒運転だったから」と供述している。 10/22
京都新聞
大学生 19 男性 東京 2023/7/7 午前0時頃 豊島区で電動キックボードに乗り、停車中のタクシーに追突。「前日の昼頃から居酒屋などでビールやハイボールをおよそ15杯飲んだ」と話している。 7/11
NHK
大学生 19 男性 沖縄 2023/6/24 午前4時半過ぎ 那覇市でヘッドライトをつけずに軽乗用車を走行、基準値2倍弱のアルコールが検出されたが、「アルコールは抜けたと思っていた」と容疑を否認。 6/24
琉球朝日放送
大学生 20 男性 熊本 2023/12/20 午前4時半頃 熊本市で蛇行運転していた車を警察が見つけ、基準値の3倍以上のアルコールが検出。「酒は飲んでいない」と容疑を否認。 12/22
テレビ熊本
大学生 20 男性 千葉 2023/12/20 午前2時頃 市川市で乗車していたタクシーの運転手とトラブルになり、そのタクシーを奪って、住宅に突っこんだ。さらに通報で駆けつけた警察官の検知器を2つに折った。再度の検査で基準値超のアルコールが検知されたが容疑を否認。 12/20
千葉テレビ
大学生 20 男性 福岡 2023/8/29 午前3時過ぎ 福岡市で車線をまたぐように車を走行。警官に停止を求められ、300mほど走行して止まった。基準値の1.7倍のアルコールが検出。友人2人が同乗。「3人で飲んだ」と話している。 8/29
福岡放送
専門学校生 20 男性 群馬 2023/7/9 午前7時20分頃 前橋市で乗用車を運転し、追い越し車線を同じ方向に走っていた乗用車の左側面に衝突し逃走した。通報を受けた署員がドライブレコーダーを確認し、衝突した車両が判明して自宅へ。基準値超のアルコールが検出された。 7/9
上毛新聞
大学生 20 男性 福岡 2023/5/22 午前2時頃 福岡市で「原付バイクがふらつきながら走っている」と後方の車から警察に通報があり、基準値のおよそ2.5倍のアルコールが検出。 5/22
毎日放送
大学生 20 女性 福岡 2023/1/18 午前0時半頃 福岡市で、軽乗用車でパトカーの前方を走っていたが、急ハンドルを切って脇道に左折。停止を求められ、基準値の5倍を超えるアルコールが検出された。「昨夜9時頃ハイボールをグラスで2杯程度飲んだが、酒は抜けたと思っていた」と容疑を否認。 1/18
福岡放送
大学生 21 男性 宮城 2023/12/11 午前8時45分頃 仙台市で乗用車を運転して信号機に衝突、基準値を超えるアルコールが検出。「酒が抜けていない状態で運転した」と認めている。 12/11
東北放送
大学生 21 男性 島根 2023/11/10 午前1時過ぎ 江津市で軽自動車のボンネットに友人の男子大学生を乗せて走行し、路上に転落させてケガを負わせた。基準値超のアルコールが検出され、過失運転致傷と酒気帯び運転で逮捕。 11/10
山陰中央テレビ
専門学校生 21 女性 北海道 2023/10/7 午前6時50分頃 帯広市で軽乗用車を運転中、パトロール中の警察官と目が合い、目をそらした。早朝の繁華街から走行してきたため呼気検査すると、基準を上回るアルコールが検知。「酒を飲んだ後、一度自宅に帰って寝たので、酒が抜けていると思った」と語った。 10/7
北海道放送
大学生 21 女性 兵庫 2023/4/12 午前2時半頃 尼崎市のコンビニ駐車場から軽自動車で車道に出ようとしてガードレールに衝突。基準値の約5倍のアルコールが検出。「居酒屋やカラオケで飲んだ」「安全運転さえすれば、飲酒運転はばれないと思った」と説明。防犯カメラの映像からコンビニに入るまでは別人が運転し、車内にはさらにもう1人いたとみられる。署員が駆けつけた際には1人だった。 4/12
神戸新聞
大学生 21 女性 北海道 2023/1/31 午前4時頃 軽乗用車を運転して帯広市の繁華街の駐車場から出たところを、警察官に呼び止められ、基準値の2倍のアルコールが検出された。 1/31
北海道放送
大学生 22 男性 熊本 2023/11/18 午前8時15分頃 熊本市で軽乗用車を運転して帰宅中、バス停に停車しようとしていた路線バスに追突。基準値の2倍以上のアルコール分が検出。 11/19
読売新聞
大学生 22 男性 福岡 2023/2/20 午前4時前 福岡市でふらつきながら走行する車を警察官が見つけ、基準値の4倍近いアルコールが検出。車には母親も酒を飲んだ状態で同乗しており、事情を聞いている。 2/20
福岡放送
大学生 23 男性 神奈川 2023/3/22 午前6時5分頃 相模原市で乗用車を運転し、対向車線から直進してきた乗用車に衝突。男性の右手に軽傷を負わせたが、歩いてその場を立ち去り、救急隊員が現場から50mほど離れた場所で発見した。基準値超のアルコールが検知。「酒を飲んで運転していたのがばれるかもしれないと思いその場を離れた」と供述。 3/23
神奈川新聞

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<アフターコロナ>
大学等で引き続き実践していただきたいアルハラ防止対策

アルハラの「伝統」は上級生から下級生へ引き継がれています。2012年5月にはじめて文部科学省から各大学に「飲酒事故防止を求める通知」が出され、その後も繰り返し通知が出されています。
新型コロナが5類になり、急激に飲み会が増えています。アルハラ、急性アルコール中毒、飲酒後の思わぬ事故や、仲間が同乗しての飲酒運転などが起きがちな状況です。
キャンパスを安全な場にし、これ以上の死者を出さないため、大学には管理と教育の両面での徹底した防止対策を、強く要望します。

  • さまざまな機会をとらえて、アルコール予防教育や啓発キャンペーンを実施する
  • ハラスメント対策の中にアルハラをきちんと位置づけ、予防・相談体制を整える
  • 20歳未満に飲酒をすすめることを禁止する
  • イッキ飲み、飲み比べ等の危険な飲酒を禁止する
  • 授業など様々な機会に、改めてアルコールについての教育を行なう
  • サークル等の幹部・顧問に対して予防研修を実施する(酔った人への介抱の仕方も含めて)
  • 「酔いつぶし」など危険な飲み会を行なうサークル等を指導する(補助金カットも含めて)
  • このような事態が起きた場合、聞き取った飲み会の状況をきちんと公表し、問題点を指摘したうえで、断固たる態度で臨むことを学生に伝える
    ※情報を隠さず発信・共有することは、再発防止に不可欠です

参考➀ 大学等における学生支援の取組状況に関する調査(令和元年度)/JASSO
取組内容:飲酒問題に関すること
https://www.jasso.go.jp/statistics/gakusei_torikumi/2019.html

参考➁ 大学の「学生の飲酒事故対策に関する取り組み」の分析2014/イッキ飲み防止連絡協議会
https://www.ask.or.jp/article/538

参考③ 第2期アルコール健康障害対策推進基本計画(令和3年3月)
1.教育の振興等 ②大学等における取組の推進
大学等の教職員が集まる会議等を活用し、飲酒に伴うリスクの啓発やアルコールハラスメント、20歳未満の者の飲酒防止等についての必要な周知を行うことにより、各大学等における入学時オリエンテーションでの学生への周知啓発等の取組を促す。【文部科学省】
https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/000760238.pdf

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